これから30年以内に70％～80％の確率で南海トラフ地震が発生すると予測がされています。
実際に、ここ数年間は日本各地で震災が発生し、多数の人が被害に遭われています。
- 2024年の元旦には、石川県能登半島地震
- 2018年の真夏の炎天下には、北海道胆振東部地震
- 2016年の桜の美しい春先には、熊本地震
このように日本では定期的に大きな地震が発生していて、直近の約10年間で三度も発生しています。
今回は震災そのものをお伝えするのではなく、震災後の混乱で起きた事件をお伝えします。
約100年前、一世紀前のお話です。
では、一緒に素敵なタイムトラベルの旅へ
福田村事件とは
100年前に起きた事件とは、福田村事件といいます。
これは香川県から来た薬の行商が、千葉県東葛飾郡福田村（現在の野田市）で自警団によって暴行され、殺害された事件です。
では、なぜこのような凄惨な事件が起きたのでしょうか。
結論からいうと、デマからの恐怖です。
というのも、各地で「朝鮮人狩り」という狂気的で非人道的な行為が行われていました。
狩られた人の中には、日本人や中国人が朝鮮人と間違われて殺されてしまうこともありました。
そんな中で、震災直後に「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが流れました。
そのデマを聞いた各地で消防団や在郷軍人が集まり自警団が結成され、警戒に当たっていました。
そんな動乱期に香川県から薬の行商一行が福田村にやってきたわけです。
事件までの流れ
1923年（大正12年）3月
被害者となった行商15人は、香川県を出発し、関西各地を巡りながら群馬県に到達します。
1923年（大正12年）8月
真夏の暑い中、群馬県を通過し、千葉県に入りました。
この千葉県で凄惨な事件に巻き込まれるとは知らずに。
1923年（大正12年）9月1日
関東大震災が発生
1923年（大正12年）9月4日
千葉県に緊急勅令による戒厳令が適用されます。
これによって、官民一体となった朝鮮人などを取り締まるための自警団が結成されることになります。
1923年（大正12年）9月6日
事件が発生します。
当日の昼頃に、千葉県東葛飾郡福田村（現在の野田市）三ツ堀の利根川沿いで起きました。
事の発端は、利根川沿いで休憩をしていた行商15人の周りを囲うように、約200人にのぼる自警団が興奮状態で「言葉がおかしい」「朝鮮人ではないか」という言葉を浴びせながら集まっていたことでした。
福田村村長が何度も「日本人ではないか」と言っても、自警団はまったく聞く耳を持ちません。
そこで駐在所の警察官が本署に問い合わせに行きます。
事件は、この直後に起きます。
15人中9人が亡くなる
駐在所の警察官が本署の警察部長と一緒に戻ってきたときには、行商15人中9人が殺されていました。
この9人には、子どもが含まれていました。
そして、遺体は利根川に流されていて、遺骨も見つからず残っていません。
残りの6人は、鉄の針金やふと縄で縛られたり、川に投げ込まれていたりしていたそうです。
本署の警察部長が自警団を説得したことで、かろうじて生き残りました。
被害者
被害者は香川県三豊郡（現在の三豊市）の行商の15人です。
15人の内で殺害されたのは、妊婦や幼児（2歳、４歳、6歳）を含む9人です。
残りの6人は、本署の警察部長のはからいで助かりました。
被害者となった行商は、元々差別部落出身であったことから、二次被害を恐れて被害の告発をしなかったといわれています。
加害者
行商の殺害の犯行に及んだ加害者は分からない状態だそうです。
というのも、混乱が混乱を呼び、誰が犯行に及んだかは分からない状態だったそうです。
ただ検挙された人は判明しています。
殺害の現場となった福田村の自警団4名と隣接する田中村の自警団4名です。
裁判
検挙された8名の罪名は「騒擾（そうじょう）殺人罪」でした。
騒擾とは、現在では騒乱といわれ、刑法106条に規定されています。
条文を引用して確認してみましょう。
騒擾殺人罪の構成要件
（騒乱）
ー 刑法 | e-Gov 法令検索
第百六条 多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
一 首謀者は、一年以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。
二 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
三 付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。
条文上は「多衆で集合して」とあります。
この意味は、大勢の人が集団で集まることをいいます。
意識的に集まった場合だけではなく、偶然その場に居合わせた人も含むと考えられています。
つまり、組織化された集団だけでなく、現場を身に来た人も含むということです。
ただ集まっているだけでは該当することはありません。
ここで必要になると考えられているのが「共同意思」です。
大勢の人で集まって、集まった人たちそれぞれの力で共同して暴行・脅迫を加えようとする意思です。
公判
起訴された被告人の主張では、「郷土を朝鮮人から守った俺は憂国の志士であり、国が自警団を作れと命令し、その結果誤って殺したのだ」ということでした。
これは、意図して自警団を作り、殺人をしたわけではなく、国からの命令で組織して、殺意なく殺人に至ったということです。
つまり、共同意思が存在しなかったと主張しています。
判決
判決では隣接した田中村の自警団1名のみが「懲役2年、執行猶予3年」の第二審判決を受け入れ、上告しませんでした。
残りの7人は、大審院へ上告し、「懲役3年～10年」という実刑判決がでました。
しかし、被告人全員が恩赦で釈放されることになります。
昭和天皇のご即位による恩赦です。確定判決から2年5か月後のことです。
恩赦後
出所した一人は、選挙を経て村長となります。
福田村の合併後は、市議会議員を務めたそうです。
事件後
1979年（昭和54年）
「千葉県における関東大震災と朝鮮人犠牲者追悼実行委員会」に福田村事件の遺族から連絡があり、現地調査を開始しました。
1983年（昭和58年）
千葉県歴史教育者協議会から香川県歴史教育者協議会へ情報が伝えられ、香川県での聞き取り調査や千葉県と香川県とでの共同調査が開始します。
この調査から少し経ち、少しずつ新聞などでも取り上げられるようになってきました。
2000年（平成12年）3月
香川県で「千葉福田村事件真相調査会」が設立されました。
2000年（平成12年）7月
香川県に遅れること4か月後に、被害地である千葉県で「福田村事件を心に刻む会」が設立されます。
これによって、香川県と千葉県の両県で福田村事件についての会が設立されることになりました。
設立総会では、事件当時5歳で戦後に福田村村長となった新村勝雄さんが「個人としてですが、被害に遭われた香川の方々に心からおわび申し上げます。事件の真相究明は今を生きる私たちの役目。地元の一人として最大限の努力をしたい」とスピーチしました。
2000年（平成12年）9月
福田村事件犠牲者追悼式が行われました。
2001年（平成13年）
「福田村事件追悼碑建立基金の募集」が始まります。
2003年（平成15年）
犠牲者を追悼する慰霊碑が野田市三ツ堀の円福寺大利根霊園に建立されます。
追悼慰霊碑の背面には犠牲者の名前は刻まれています。
ただ、犠牲者らがなぜ殺されたかがわかる説明は書かれていませんでした。
2024年（令和6年）9月6日
事件発生地の野田市を中心に活動している市民団体により、追悼慰霊碑の隣に本事件の説明を刻んだ石碑が新たに設置されました。
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まとめ
この記事を執筆しようと思ったのは、ずっと気になっていたDVDを借りたことからです。
そのDVDを借りようと思っていた時に、偶然ニュースで石碑の建立の記事がありました。
これは記事として取り上げるしかないと思いました。
今年は1月1日の元旦から能登半島で地震が起き、大きな震災の前触れかもしれないと不安を煽られるほどの社会不安が広がっています。
改めて、こういった震災後の事件を取り上げることで、これから来るかもしれない震災への心構えにもなればいいなと思っています。
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今回のタイムトラベルの旅は終了です。
では、また一緒にタイムトラベルの旅に出ましょう。
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